前作までの「変態ストリングスコンビ」が脱退し、ギターはジェイソン・ベッカーとスティーヴ・ハンター、ベースをマット・ビソネットを据えて制作されたデヴィッド・リー・ロスの3rdアルバム。前2作ではデイヴの“脳天気なエンターティナーっぷり”と、スティーヴ・ヴァイ&ビリー・シーンの“超人的なプレイ”の2枚看板が売りで、特に「Yankee Rose」はディヴを喰わんばかりのギタープレイを前面に押し出したナンバーだった。
しかし、前面に出るようなギタープレイは本作にはない。そのことを「ヴァイが抜けたから」と嘆くファンも多いが、そうではない筈だ。新しく迎えられたジェイソン・ベッカーは、“若き天才”と言われたギタープレイヤーである。マーティ・フリードマン(元メガデス)とのツインギターで活躍していたカコフォニーや、彼のソロアルバムを聴いた人なら分かっていただけると思うが、本作でのプレイくらい彼には朝メシ前。つまり、本作ではギター云々以前に楽曲そのものがハードロックからR&B色の強いものへとシフトしており、楽曲を損なわない程度に抑えているというのが正しいのではないか。もちろん「あくまでバック」というデイヴのバンド定義が強く反映されていると思う。とはいえ、M4「Hammerhead Shark」で、右チャンネルからはハンターのスライド、左チャンネルからはジェイソンがの速弾きと、スタイルの異なるプレイが聴けるのは面白いし、ジェイソン作曲のM11「It's Showtime!」も、ジェイソンがヴァン・ヘイレンのファンだったことがよく現れた疾走感溢れるナンバーで、決して駄作ではない。 残念ながらジェイソンは、本作のレコーディングの最中に左手の脱力症状がはじまり、思うようにプレイできなくなったため本作限りでバンドを去った。原因は「ALS」という筋萎縮性の難病で、13年経った今でもなお闘病中である。今このジャケットを見ると、ジェイソンの不幸とセールス不振のダブルパンチを受けたデイヴ自身に見えてしまうから不思議なものだ。
by velvet_iris
| 2004-09-05 14:51
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